Guide · 運用・トラブルシュート
光測定器の選び方と測り方
『どんな機能が要るか』『どう測れば正しいか』はやる仕事で決まります。受光レベルを測るだけなら波長を合わせた OPM 1 台で十分、損失を certify するなら安定化光源とのペア(OLTS)、距離特定なら OTDR——役割分担と、構築・トラブルシュートで実際に効く機能、そして Tx/Rx・損失(dB)の測り方と単位(dBm/µW)の読み方を、変換ツール付きで整理します。
何を測るか — Tx/Rx/損失と波長合わせ
DOM が無い・信用できない・区間を切り分けたいときは、光パワーメータ(OPM)で実測します。 見るのは2点と、その差です。
- Tx 出力:SFP の送信を直接メータへ → データシートの送信範囲内か
- Rx 受光:受信端で → SFP の受信感度とリンクバジェットに余裕があるか
- Tx − Rx = リンク損失(dB) ← これが本当の診断値
メータの波長を必ず合わせる
SR=850nm/MM、LR=1310nm/SM、ER·ZR=1550nm/SM)。「モード」でなく「波長」で考える
よくある誤解ですが、OPM の検出器はシングル/マルチを区別しません。当たった光のパワーを積分するだけで、 本質は波長です。対応波長を持ち、測定対象に設定すれば 1台で SM も MM も測れます。 SM/MM が強く効くのは光源(OLS)を足して損失を certify するときで、光源・基準コード(TRC)・(MMなら)launch条件を ファイバ種別に一致させる必要があります(MM は 50/62.5µm のコア径一致も)。
| 測りたいもの | 必要な機材 | SM/MM 依存 |
|---|---|---|
| 稼働リンクの Tx/Rx 受光(現場で最多) | OPM 単体 | なし(波長を合わせるだけ) |
| 挿入損失の certify(Tier1) | 校正済み 光源+OPM のペア(OLTS) | あり(種別・波長・launch を一致) |
| 障害点の距離特定(Tier2) | OTDR | あり(種別ごとのモジュール/設定) |
単位の読み方 — dBm と µW(変換ツール)
多くのメータや DOM は dBm(対数)ですが、Brocade Fabric OS の sfpshow は µW(マイクロワット=リニア)で出ます。 同じ光の強さを別スケールで書いているだけで、1000 µW = 0 dBm を起点に換算できます。 相互変換と受光レベルの目安は、すぐ下のツールで試せます(単独ページ: dBm ⇄ µW 変換)。
- dBm
- -4.56
- µW
- 350
- mW
- 0.35
- W
- 3.500e-7
多くの光リンクで健全な範囲です。
※ 一般的な光受光レベルの目安です。正式な良否は SFP のデータシート(Rx 感度 / 最大入力 / Tx 範囲)と突き合わせてください。
dBm = 10 × log10( µW ÷ 1000 ) µW = 1000 × 10 ^ ( dBm ÷ 10 ) 暗算: 1000µW=0dBm / ÷2 → −3dB / ÷10 → −10dB
| µW | dBm | 目安 |
|---|---|---|
| 2000 | +3 | 強い(過入力に注意) |
| 1000 | 0 | 1mW・強い |
| 500 | −3 | 良好 |
| 100 | −10 | やや低め(光種による) |
| 10 | −20 | かなり低い・感度ぎわ |
| 1 | −30 | ほぼ底(多くの光で感度割れ) |
| 0 / -inf | — | 無光=断線・抜け・遠端 down |
判定は「閾値」と「損失」で
- sfpshow は同じ µW 単位で High/Low の Warning/Alarm 閾値を併記。 Rx が low 閾値を割っていないか見れば、変換せず即判定できる。
- 損失(dB)は µW の比で出す:
10 × log10(近端Tx_µW ÷ 遠端Rx_µW)(例: 600→150µW = 6dB)。 - 絶対値の良し悪しは、その光のデータシート(Tx範囲 / Rx感度 / 最大入力)と突き合わせる。
挿入損失(ケーブル区間の減衰)を測る — 光源(OLS)とペアで
受光は OPM 単体で測れますが、ケーブル区間そのものの減衰(dB)を測る (=対向 Rx が低い原因がケーブルか切り分ける)には、波長を合わせた安定化光源(OLS)とペアにします。 手順は「基準化 → 測定」の2段です(例として光源を持たない E-200 + OLS の構成)。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 準備 | OLS と OPM を同じ波長に設定(例 1310nm)。清掃済みのリファレンスコードを用意 |
| 2. 基準化(リファレンス) | OLS にリファレンスコードを繋ぎ OPM へ直結 → 表示を 0dB 基準(REL)に。光源出力+コード分を相殺 |
| 3. 測定 | リファレンスコードを外さず被測定リンクを間に挿入し、遠端で受光 → 表示 dB = そのリンクの挿入損失 |
| 4. 判定 | リンクバジェット(コネクタ ~0.3〜0.75dB/箇所 + ファイバ減衰 + スプライス)と比較。超過なら清掃/不良/曲げ/長すぎ |
VFL(赤色ペン)を光源代わりにしないこと
- 損失測定の光源は「安定化光源(OLS)」+「リンクと同じ波長」が条件。安価・ペン型でも「安定化(stabilized)」表記で 1310/1550nm(SM)や 850/1300nm(MM)を出す製品なら OK。
- VFL の 650nm 赤色光は不可。非テレコム波長で出力も非安定なため、損失値が意味を持ちません。 VFL は破断/導通/極性の可視化専用と割り切る。
- 波長は対象リンクに合うものを(SM 用で MM は測れない/その逆も不可)。校正確度は期待せず相対チェック用途。
機材の役割分担と、現場で必要な機能
「何を買えば足りるか」はやる仕事で決まります。短距離(DC内・建物内・FTTHドロップ)の障害復旧を急ぐ用途なら、DOM + OPM+VFL + 清掃キットで実務の 8〜9 割は片付きます。
| 機材 | 役割 | いつ要るか |
|---|---|---|
| ライブファイバ検出器(端面検出型・例: Fluke FiberLert) | 露出端/ポートの活線・無光・極性を即判定(数値なし) | 差す/覗く前の安全確認・露出端/オープンポートの活線確認 |
| OPM(光パワーメータ) | 受光/送信レベル・損失(dB)の実測 | ほぼ常用。リンク健全性チェック |
| VFL(赤色光源) | 破断/曲げ/不良コネクタの可視化・導通・極性 | 短距離の物理障害切り分け |
| OLTS(校正光源+OPM) | 挿入損失の Pass/Fail certify(文書化) | 竣工/受入試験・成績書提出 |
| OTDR | 障害点を「距離」で特定・スプライス損失 | 埋設/長距離・OSP。年数回ならレンタル |
現場で必要な機能(構築・トラブルシュート)
製品ごとの価格や性能の優劣は評価が難しく、必要十分も用途で変わります。そこで価格やブランドの比較ではなく、ネットワーク/インフラの構築・障害対応で実際に効く機能を基準に、手持ちの光パワーメータへ 最低限そろえたい仕様を挙げます。
| 必要な機能 | なぜ必要か(構築・トラブル時) |
|---|---|
| 対応波長が SM/MM 両対応(850/1300・1310/1550nm) | 現場は SR=850・LR=1310・ER=1550nm が混在。1台で全部測れないと回らない |
| dBm と µW の両表示 | 機器 DOM は dBm、Brocade の sfpshow は µW。どちらの値とも突き合わせられる |
| 広い受光レンジ(例 −70〜+6dBm 程度) | 微弱な受光割れから過入力まで取りこぼさない |
| Tx 出力の直接測定 | SFP の送信が規格内かを、その場で確認できる |
| 相対測定(REL/0dB 基準化) | 安定化光源とペアで挿入損失(dB)=区間の良否を出せる |
| VFL(赤色光)内蔵 or 併用 | 破断・曲げ・極性・対向先の可視化を同じ現場で行える |
| 可搬性・電池駆動・オートオフ | ラック間〜屋外を持ち回る現場で実用的 |
確度と校正
次の Elfcam E-200 は、これらの条件をほぼ満たす手頃な 1 台の例です。
Elfcam E-200 でできること/できないこと
主軸として手頃なのが Elfcam E-200(Amazon)。安価ながら、トラブルシュートの実務はほぼこなせます(下表)。 ※ Amazon アソシエイトのリンクを含み、購入で当サイトに収益が入る場合があります。

| できる | できない(別機材が必要) |
|---|---|
| 稼働 SFP の Tx 出力測定(規格内か) | 挿入損失の certify = 安定化光源(OLS)が必要 |
| 受信端の Rx 受光測定(感度割れ判定) | 障害点の距離特定 = OTDR |
| 7波長(850〜1625nm)→ MM/SM 両対応 | 自動 Pass/Fail の成績書 = OLTS / Fluke クラス |
| VFL(赤)で破断/曲げ/不良コネクタ可視化・導通・極性 | 高確度・校正トレーサビリティ |
| −70〜+6dBm、µW/dBm 表示 | — |
E-200 で損失を測りたいなら
Fluke クラスは「別の仕事」用
よくある質問
- Q. 光パワーメータはシングルモードとマルチモードで別物が必要ですか?
- 受光レベルを測るだけなら不要です。パワーメータの検出器はモード構造に依存せず、本質は『波長』です。対応波長(例: MM の 850/1300nm、SM の 1310/1550nm)を持ち、測定対象の波長に設定すれば 1 台で両方測れます。ただし光源(OLS)を足して損失を certify する場合は、光源・基準コード・(MMなら)launch条件をファイバ種別に一致させる必要があります。
- Q. Brocade の sfpshow は Tx/Rx が µW(マイクロワット)表示です。どう読みますか?
- µW はリニアな絶対値で、1000 µW = 0 dBm が基準です。換算は dBm = 10 × log10(µW ÷ 1000)。暗算では µW が ÷2 で約 −3dB、÷10 で −10dB と読めます(500µW≈−3dBm、100µW=−10dBm、10µW=−20dBm)。良し悪しは sfpshow が同じ µW で併記する High/Low 警報閾値と比べれば変換不要で判定でき、損失は 10 × log10(近端Tx_µW ÷ 遠端Rx_µW) で dB 化します。0 µW や -inf は無光(断線・抜け・遠端 down)を意味します。
Related