Guide · 運用・トラブルシュート
光リンクのトラブルシュート手順
光リンクの障害は『とりあえず全部交換』ではなく『測って当てる』のが速い。まず CLI で DOM/DDM を読み、必要なら手元で活線確認 → 光パワーメータで損失(dB)を測り、清掃と VFL で原因を絞り込む——この流れを各ステップ『やること』単位で短くまとめます。詳しいコマンド表や機材の選び方は、各ステップの『さらに詳しく』から専用ページへ。
全体像 — 「測って当てる」4ステップ
光はメタル(イーサ)と故障モードが違います。最大要因は『断線』ではなく端面の汚れ・コンタミで、 原因が 送信(SFP)・経路(ファイバ/コネクタ)・受信・光以外(設定) のどこにあるかが見えにくい。 だから「とりあえず全部交換」ではなく、測定値で原因を絞るのが速い。
3つの原則
- 触る前に読む — 抜く=端面を汚すリスク。まず CLI の DOM で済むなら抜かない。
- 絶対値でなく損失(dB)で見る — Tx − Rx = リンク損失。基準は SFP のデータシート。
- 変えるのは一度に1つ — 直っても原因を必ず記録(再発時の資産)。
以下は各ステップの“やること”だけをまとめた早見です。困りごとから直接引きたいときは 次の「症状・目的から引く」表へ。コマンド表・機材選び・各ツールの詳説は、カード下の「さらに詳しく」から専用ページへ。
症状・目的から引く(早見)
「いま何をしたいか/どんな症状か」から、使う道具と進む STEP を引けます。各行のリンク先で具体手順を確認してください。
| やりたいこと・症状 | まず使う道具 | 見るポイント / 進む先 |
|---|---|---|
| どのポート/ケーブルに通信(データ)が来ているか知りたい | FiberLert(活線検出) | 露出端・オープンポートで光の有無(GO/NO-GO)→ STEP 0+ |
| 複数ケーブルのうち対向先がどれか分からない | VFL(赤色光)/ FiberLert | 暗芯に VFL 注入 → 対向端で赤く光る1本を特定 → STEP 2 |
| 光の送信・受信が正常か知りたい | 機器コマンド(DOM) + OPM | Tx範囲・Rx感度・損失(dB) → STEP 0/1 → 判断マトリックス(STEP 3) |
| 自分の Tx は正常なのに対向の Rx だけ低い | 清掃キット → OLS+OPM / VFL | 清掃で直る? 残れば区間の減衰測定・損傷可視化 → STEP 2 |
| 光レベルは正常なのにリンクしない | 機器設定の確認 | 種別/波長・極性・duplex・config → STEP 3 の「光以外」 |
CLI で DOM/DDM を読む
いまの SFP/SFP+/QSFP はほぼ DOM/DDM(デジタル光モニタ) 対応で、スイッチから Tx 出力・Rx 受光をファイバを抜かずに読めます。ここが切り分けの起点です。
まず用語の整理。光リンクは2 本のファイバで、Tx=送信、Rx=受信。A-Tx は「Switch A が送る光」、B-Rx は「Switch B が受ける光」という意味です(下図)。
- 両端のスイッチで Tx/Rx を読む(
Cisco: show interfaces transceiver detail)。 他ベンダーのコマンドは「さらに詳しく」へ。 - 光は2芯で方向ごとに独立。両端の Rx を並べ、低い側が壊れている「方向」を指す。
- DOM は校正器ではない(ベンダー差 ±数dB)。きわどい値は STEP1 のメータで裏取り。
| 観測(両端を読む) | 示すもの | 次の手 |
|---|---|---|
| A-Tx が低い/無光 | A の SFP 送信不良 | A の SFP 交換 |
| A-Tx 正常・B-Rx が低い | A→B 方向の経路損失 | 清掃 → 再測定 → パッチ交換 |
| 両 Tx/Rx 正常・無リンク | 光は問題なし | 光以外(STEP3 へ) |
活線・通信の有無・ケーブルを手元で特定(差す/覗く前に)
「このポート/ケーブルに通信(データ)の光が来ているか」を手元で確かめたいとき——ライブファイバ検出器(端面検出型・例: Fluke FiberLert(FIBERLERT-125))を露出端やオープンポートにかざすと、光の有無を光と音の GO/NO-GO で知らせます。 ※ Amazon アソシエイトのリンクを含み、購入で当サイトに収益が入る場合があります。


- 通信が来ているポート/ケーブルの判別:外したパッチコード端やパッチパネルのオープンポートを スイープし、実データの光が出ている=活線のものを特定(ラベル不一致でも見つかる)。
- 安全確認:覗く・機器や OPM に挿す前に活線を確認(レーザー被曝・活線挿入の防止)。
- 極性(Tx/Rx):外した端で、デュプレックス対のどちらに遠端の光が来ているか判定。
- 注意:両端が刺さって稼働中のリンクを在線では読めない(露出端/オープンポートが要る・ 在線識別はクランプオン式の識別器)。点灯=活線、無点灯≠無光(確定は DOM/OPM で裏取り)。
光パワーメータで測る
DOM が無い・信用できない・区間を切り分けたいときは、光パワーメータ(OPM)で実測します。 見るのは Tx・Rx とその差=損失(dB)。
- Tx 出力 はデータシートの送信範囲、Rx 受光は受信感度・リンクバジェットと突き合わせる。
- Tx − Rx = リンク損失(dB) が本当の診断値。
- メータの波長を必ず合わせる(
SR=850・LR=1310・ER/ZR=1550nm)。 OPM は「モード」でなく「波長」で考える。 - 単位は dBm と µW(Brocade は µW)。1000µW=0dBm。換算は dBm ⇄ µW 変換ツールで。
清掃 → ケーブル減衰チェック → VFL
自分の Tx は正常なのに対向の Rx だけ低い——このときの最頻原因は端面の汚れです。次の順で潰します。
① まず清掃(inspect → clean → inspect)
見ずに闇雲に拭かない/拭いた後も確認。抜いたら戻す前に必ず清掃——汚れたまま挿すと メータやポートに汚染が移ります。これだけで直ることが多い。
| 清掃対象 | 道具 | 径 |
|---|---|---|
| LC・MU(プラグ+アダプタ内) | NTT-AT NEOCLEAN-E1 | 1.25mm |
| SC・FC(プラグ+アダプタ内) | NTT-AT NEOCLEAN-E2 | 2.5mm |
| プラグ端面の反復清掃 | 光ファイバークリーニングボックス | LC・SC 兼用 |
※ 道具名のリンクは Amazon アソシエイトを含み、購入で当サイトに収益が入る場合があります。
② 清掃で直らなければケーブル自体を疑う
- 区間の減衰(dB)を実測:単体光源(OLS)+OPM でそのケーブル区間の損失を測り、 リンクバジェット超過なら不良・急曲げ・長すぎ(測り方は下の「さらに詳しく」へ)。
- 損傷箇所を可視化:VFL(650nm 赤色光)を消光した(暗)ファイバに通すと、破断・急曲げ・不良/汚れコネクタで光が漏れて赤く見える(露出配線・〜3〜5km 向き)。
VFL はケーブルの「対向先」特定にも使える
安全
DOM×OPM 判断マトリックス — 原因を当てる
STEP 0(機器コマンド=DOM)と STEP 1(OPM)の結果を、1 方向(A→B)について突き合わせます。行=A 側の送信(自 Tx)、列=B 側の受信(対向 Rx)。交点が原因と次の手です。
| 自 Tx(送信)\ 対向 Rx(受信) | 対向 Rx 正常 | 対向 Rx 低い | 対向 Rx 無光 / N/A |
|---|---|---|---|
| 自 Tx 正常(範囲内) | A→B は健全(無リンクなら下の『光以外』へ) | A→B の経路損失 → STEP 2(清掃→減衰チェック) | A→B の断線・抜け・芯違い・極性逆 |
| 自 Tx 低い/無光 | (通常あり得ない=DOM 誤差を疑い両端で再測) | A の Tx 不良 → A の SFP 交換 | A の Tx 不良 → A の SFP 交換 |
DOM と OPM の使い分け(食い違ったら?)
| 測定 | 分かること | 信頼度・使いどころ |
|---|---|---|
| 機器コマンド(DOM) | 自端の Tx/Rx・温度(両端を一度に・非破壊) | 簡易(±数dB)。傾向把握と方向の当たり付け |
| OPM(光パワーメータ) | 物理的な Rx 受光(区間切り分け/Tx は直結で測定) | 校正済みなら高精度。きわどい値の確定 |
「光以外」を疑うチェックリスト(光レベルは正常なのに無リンク)
- SFP 種別/波長のミスマッチ(片側 SR・片側 LR 等)← 典型
- Tx/Rx 極性の逆(新規パッチ・差し替え後)← VFL/検出器で追える
- duplex/speed・ポート admin-down・L1 エラーカウンタ・VLAN/MTU/L2-L3 設定
- DAC(メタル直結)なら光の話は無関係 = 別系統の切り分け
機材の選び方(早見)
「何を買えば足りるか」はやる仕事で決まります。短距離(DC 内・建物内・FTTH ドロップ)の障害復旧が主目的なら、DOM + OPM + VFL + 清掃キットで実務の 8〜9 割は片付きます。
| 機材 | 役割 | いつ要る |
|---|---|---|
| ライブファイバ検出器 | 活線/極性を即判定(数値なし) | 差す/覗く前の安全確認 |
| OPM(光パワーメータ) | 受光/送信・損失(dB)の実測 | ほぼ常用 |
| VFL(赤色光源) | 破断/曲げ/不良コネクタの可視化 | 短距離の物理切り分け |
| OLTS(校正光源+OPM) | 挿入損失の Pass/Fail certify | 竣工・受入・成績書 |
| OTDR | 障害点を「距離」で特定 | 埋設/長距離。年数回ならレンタル |
よくある質問
- Q. リンクが上がらないのに光レベルは正常です。次に何を見ますか?
- 光以外を疑います。両端の SFP 種別/波長のミスマッチ(SR と LR の混在など)、Tx/Rx 極性の逆、duplex/speed/encoding、ポートの admin-down、L1 エラーカウンタ、VLAN/MTU/L2-L3 設定です。光レベルが規格内なら、SFP やケーブルを交換しても直りません。
- Q. VFL(赤色光)で破断箇所の正確な距離はわかりますか?
- 距離は数値では出ません。VFL は 650nm の可視赤色光で、破断・急曲げ・不良コネクタの箇所で光が漏れて赤く光るため、露出した短距離(〜3〜5km、被覆が光を透す場合)なら『どこか』を目視特定できます。埋設・管路内・長距離での正確な距離特定は OTDR の役割です。
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